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IT技術の進化により、従来のひたすらにアプローチを行う営業手法も変わりつつあります。
より成約率が見込めるリードを選定してアプローチを行うインサイドセールスは、多くの企業で導入され、営業効率や売り上げの向上を実現しています。
本記事では、インサイドセールスとは何かという基本的な解説から導入のメリットやデメリットなどを紹介していきます。
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、営業手法の1つで、企業が保有する見込み顧客の中から成約の可能性が高い顧客を見極め、効果的に営業を行うことができます。
見込み率が低いリードに対しては、成約する可能性を高めるためにメールや電話などで離脱率を抑え、効果的な施策を行うことでリード育成を実現します。
従来の足で稼ぐ営業スタイルとは違い、インサイドセールスでは営業担当者が見込顧客を獲得したり顧客のフォローしなければいけない手間を省略することができるので、コア業務に集中してもらうことができます。
営業担当者自らが顧客リストの作成やテレアポを行い、顧客フォローまでこなしていた以前の営業手法では成約確度が高くない顧客にもアプローチを行わなければいけない場合も多く、かけた労力に対して結果が見合わないケースも少なくありませんでした。インサイドセールスの手法を用いれば予め成約確度の高い顧客へアプローチをかけることができるので営業効率を高めることができます。
フィールドセールスとの違い
フィールドセールスは顧客との対面を主とした営業手法で、リストの選定から顧客への提案や商談、成約を目的とした営業を行います。
営業担当者が見込み顧客の管理からアポイントの獲得、顧客への提案などの営業活動をカバーしなくてはいけないため負担が非常に大きく、営業担当でなければ把握していない情報も多くなってしまうことから属人化が起きてしまうというデメリットがあります。
営業担当者の能力が高ければ、より顧客に寄り添った提案をすることができるので成約率を高めたり、詳細な顧客情報を獲得できるというメリットはありますが、1件のコンバージョンを獲得するのにかける労力が大きく、総合的に見れば効率的な営業活動とは言い難い部分はあります。
インサイドセールスが注目される背景
人材不足による効率化の必要性
少子高齢化や働き方の多様性による企業への定着率の低下、これらの問題から企業における営業部員の不足が深刻な課題となっています。
限られた人材で営業効果をあげるためには、営業効果をあげる手法が必要となります。従来のようなマンパワーに頼った営業方法では営業効果を高めることは難しく、成約確度が高い見込み顧客の発掘、育成を前提とした営業手法が求められるようになったことからインサイドセールスが注目されるようになりました。
売り上げ獲得の施策が限られてきた
様々な企業が多種多様なサービス、モノを開発して売り上げを伸ばしてきた背景がある現代では、全く新しいモノを作ることが難しくなってきました。
インターネットが発達したことにより、ユーザーは自ら情報を収集することができるようになり、訪問営業に対しても警戒心を抱く人も少なくありません。
このような売り上げアップのための施策が狭まってきた状態において、営業効率を上げる考え方が求められるようになったことはインサイドセールスのニーズを高めました。
インサイドセールス導入のメリット
少人数で営業効果をあげることができる
従来のフィールドセールスと比べ、インサイドセールスは少ない人数で大量のリードに対してアプローチを行うことができます。
足を使っていた営業では一日に4件〜5件ほどのアプローチしかできなかったというケースも、インサイドセールスを取り入れることで数十件、ツールを利用すれば数百件以上のアプローチを行うことも可能なので、限られた人員でも営業効率を大きく高めることができます。
リードの有効活用ができる
インサイドセールスを取り入れることで、今まで手をつけていなかったリードに対してもアプローチを行うことができるので、すぐにホットリードとならなくとも、企業に顧客を繋ぎ止めることができるようになります。
検討中の顧客に対して、クーポンやキャンペーンの案内などを行い接点をつなげることでリードの育成を行い、将来の顧客発掘に導くことができるようになります。
ナレッジ共有ができる
顧客管理の質をあげることで、獲得した知識や経験をナレッジ共有という形で営業に共有して、組織の営業力を高めることができます。
フィールドセールスなどの属人化が課題になりがちな営業手法も、インサイドセールスを取り入れることで、リードの管理から育成までを行うようになるので、営業担当に任せきりになってしまう課題を解消することが可能です。
顧客情報がしっかりと把握できるようになると、有効な流入経路がわかり新規リードの獲得にも活かすことができるようになり、組織の営業力が成長していきます。
営業担当の負担が軽減される
従来の営業手法であれば見込み顧客の選定やアポイント、商談、提案、資料作成などは営業担当が1人、もしくは数人のチームで行っていました。このような手法では営業担当にかかる負担は非常に大きく、提案の質を保つことも難しいというデメリットがありました。
インサイドセールスを導入することで、営業担当へ成約確度の高いリードを引き継ぐことができるので、営業担当は商談や提案資料作成などに集中することができ、コア業務の質を高めることが可能となります。
インサイドセールス導入のデメリット
ルール設定に時間が必要
新しい手法を取り入れるということはそれに合わせたルール設定を行う必要があります。
インサイドセールスの場合、フィールドセールス部門との連携が必要不可欠となるので、顧客情報の共有をどうやって効率化するのか、情報漏洩が起きないようにするにはどういったセキュリティ対策が必要なのかなどルールを決めて、それを組織内で浸透させていくための時間が必要となることに注意が必要です。
ツール導入にコストがかかる
インサイドセールスを導入するために、顧客情報を効率的に管理できるCRMツールやSFAツールを取り入れようという場合には、当然ですがツール利用の初期費用や月額料金が発生します。
無料プランを提供しているものもありますが、基本的には一定の金額が毎月かかることになり、円滑に活用できるまでは費用対効果を感じられなかったり、システムの操作が難しくて組織に根付かなかったという例もあります。
コスト面ももちろんですが、操作性もトライアルなどで検証してから自社にマッチしたツールを選ぶようにすることで、短時間で組織の営業効果を上昇させることが可能となります。
インサイドセールス導入の注意点
顧客情報のデータベース化が必要
インサイドセールスを行うにあたっては自社が保有する顧客情報をデータベースにしてシステム化する必要があります。
膨大な顧客情報を保有している場合は、専用のSFAなどのシステムを用いて一括での取り込みなどを行うことで効率的にデータベース化することができますが、ツール利用のための学習期間や費用がかかることに注意しましょう。
余裕を持って取り組む
新しい営業手法をいきなり取り入れたからといってすぐに営業活動が効率化できるというものではなく、組織がインサイドセールスの特徴を理解し、浸透させるためにある程度の期間が必要となります。
また、効率化のためにツールを利用する場合は、ツールの操作性や特性を理解するための学習期間が必要となる場合もありますので、インサイドセールスを取り入れる際にはある程度の時間的余裕を持って取り組むと良いでしょう。
営業経験が豊富な人材に担当させる
インサイドセールスには顧客のニーズを読み取る営業力が必要となるケースもあるので、営業としての経験が豊富で論理的な思考ができる人材を担当者に任命した方が良いです。
営業力がある人材の元で改善を重ねていき、組織に合ったインサイドセールスを構築していくことが重要です。
インサイドセールスを「辛い」と感じる人材も
インサイドセールスを導入している企業の一部では、インサイドセールスが辛いと感じている人材も少なくないようです。
導入することで、営業業務の効率化や営業力向上が見込めていいことだらけのような印象があるインサイドセールスですが、なぜ辛いと感じさせてしまうのでしょうか。
その要因としては、電話やメールなどの業務事態に辛さを感じているというよりも、組織としての運営体制に不安があるという意見が多いようです。
貢献度を低く見られてしまう
他部署から見た場合、インサイドセールスへの理解が浅いことが原因で、インサイドセールスの効果が売り上げに直結すると考えられていることもあります。それ故に、他部署から見た時に今までのフィールドセールスと比べて貢献度が低いと思われてしまうという問題が発生してしまいます。
電話業務が多いからと言ってテレアポのような営業方法だと思われて、自分の業務を理解してもらえないことから辛いと感じてしまうケースもあるようです。
KPIを達成できない
KPI(重要業績評価指標)を達成できないことからインサイドセールスの難しさを感じ、やりがいが感じられないといったケースもあります。
このような場合、そもそものKPI設定が間違っていることや、KPIを達成できるほどのリード数を確保していないこと、リードタイムが長い商材なのに短期間での結果を求めている、インサイドセールスに充てる人材不足などが原因として考えられます。
アポ獲得数やコール数をインサイドセールスの目標として設定してしまうと、成約確度の高い見込み顧客の獲得という本来の目的とは離れた質の低い営業を行ってしまうことになるので注意が必要です。
また、インサイドセールスの成果が見込めるには半年以上の期間を目安として考えなければいけないのですぐに成果を求めるようなKPIを設定してしまうのは従業員のモチベーション低下に繋がってしまいます。
適切な人材比率が編成できていない
インサイドセールスに充てる人員数とフィールドセールスに充てる人員の比率が偏ってしまうとPDCAが効率的に回せなくなってしまいます。基本的には同比率になるように人数を編成して、お互いのチームで蓄積した情報の共有をするようにしましょう。
効率化ツールが導入されていない
インサイドセールスを効率的に行うにはMAツールやSFAなどの営業効率化ツールの導入が必要不可欠です。
少人数で組織されているからといってツールを導入しなければいつまでもマンパワーに頼った営業を行うしかなくなり、インサイドセールス導入の成果を実感できるまでに相当の時間を要することとなってしまいます。
いずれのケースでも、上司や経営層にインサイドセールスに関する理解を深めてもらい、適切な人員配置やKPI設定を行ってもらうことで成功体験を積み重ねていくことがインサイドセールスを辛いと感じる問題の解決法になります。
インサイドセールスを成功させるには
インサイドセールスは単独では成り立たない業務です。マーケティング部門が獲得したリードを選別したり育成して最適な状態でフィールドセールス部門へとトスアップすることが重要ですので、この3つの部門での連携が欠かせないものとなります。
インサイドセールスによってアプローチしたものやリードナーチャリングを行うまでに至らなかったもの、インサイドセールスによって得た顧客からの意見をマーケティング部門に伝えることでマーケティング部門は受け取った情報を活かして集客を強めていくことができるようになります。
フィールドセールス部門に対しては、インサイドセールスによって発掘したホットリードを提供することで商談の成約率を向上させることができます。顧客からのニーズを伝えておくことで、商談·提案方法を改善していくことも可能になります。リード育成についての改善点をフィールドセールス部門からインサイドセールス部門へ下ろすことも可能なので相互に改善点を伝え合って組織として成長することができるようになります。
インサイドセールスの効率化に有効なツール
CRM(Customer Relationship Management)
CRMツールは顧客管理には欠かせないツールで、購入履歴や購入時期、その他詳細な情報をCRMツールで一元管理することでインサイドセールスに活用していくことが可能になります。既に購入履歴がある顧客との関係性を継続していくための施策を行うために、CRMから顧客分析を行い、顧客満足度·顧客体験の向上を目指します。
SFA(Sales Force Automation)
営業支援ツールとして幅広い企業で導入されているSFAを活用することで、営業部門の案件状況や進捗状況を視覚化して把握できるようになります。
リードに対するアプローチ履歴を確認できるので、次にすべき営業活動をデータ化して部署内で共有することができるというメリットがあります。これによって、より成約率の高い商談を行うことができるようになります。
MA(Marketing Automation)
MAツールを導入することで、リードに対するアプローチ履歴の確認、リードの行動ログの把握ができるようになり、これらの蓄積した情報をもとに適切なアプローチ·コミュニケーションが実現できるようになります。
商談段階までつなげられるようにリードをホットリードまで育成することができるのでインサイドセールスにおいては重要なツールと言えます。
インサイドセールスの導入で営業効果の向上を
インサイドセールス成功のためにはマーケティング部門やフィールドセールス部門との連携が欠かせません。
効率的な連携体制を築くためにも各種ツールの導入はぜひ積極的に検討してみてください。
導入直後はなかなかインサイドセールスの効果が表れず課題も増えると思いますが、これからの営業手法にインサイドセールスは欠かせないものですので、ある程度の時間的余裕を持ってしっかりと腰を据えて取り組むことがインサイドセールス成功のカギです。
インサイドセールスの導入を成功させることで、企業側と顧客側双方に利益をもたらすことができるので、本記事を参考にして是非自社だけの営業手法を確立してください。