少子高齢化や働き方の多様化などにより、企業では社員の定着率低下や人材不足が課題となっています。
以前と違い、限られた人数で業務の生産性を向上させていくには、社員一人ひとりのモチベーションを向上させパフォーマンスを上げていく必要があります。
効率的に社員の生産性を向上させるには、一人ひとりの目標設定が欠かせません。そして目標管理を行うことで、効果的に社員の目標に対する評価が行えることから目標管理制度(MBO)を導入する企業も増えています。
本記事では目標管理の基本的な意味から導入のメリット、目標管理における評価方法やおすすめのツールなどを紹介しますので参考にしてください。
目標管理とは?目標管理の重要性とOKRとの違い
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目標管理とは、組織としての目標と個人としての目標が連動するように設定し、社員一人ひとりが自己の目標を管理し、達成することで組織としての目標を達成することを目的としたマネジメント手法のことを指します。
以前から個人として目標を設定することは多くの企業で行われていましたが、個人の目標が組織としての目標に反しているものもあり、個人目標の達成が経営ビジョンの実現につながっていないケースもありました。
目標管理はアメリカの経営学者ピーター·ドラッカーによって提唱されました。目標管理の手法としてはMBO(Management By Objectives)、KPI(Key Performance Indicator)などがあり、企業の運用方法にあった手法が取り入れられています。
企業側から個人の目標を設定するのではなく、社員一人ひとりが自ら目標を考えて設定し、達成に取り組むことで自己成長を促すことができ、能動的に考え行動できる人材を育成できることからその重要性は非常に高いと言えます。
OKRとの違い
OKRはGoogle社などで取り入れられたことから世界中で注目されるようになった目標管理手法で、定性的な目標を設定して、それに基づく定量的な主要な結果と達成指標を設定した後、その達成度合いをスコア形式で判定していきます。
MBOと比較して、評価頻度が月に1回であったり企業によっては2週間に1回など短いスパンで行われることが特徴的です。
また、SMARTというフレームワークに沿って測定が行われることもMBOとの違いになります。SMARTは以下の頭文字を表しています。
- Specific(具体的な)
- Measurable(測定可能である)
- Achievable(達成できる)
- Relevant(関連性がある)
- Time-bound(時間的期限を定めた)
OKRは企業としての目標を社内で共有しつつ個人の目標を連動させるため、目標達成が生産性の向上に繋がるという特徴もあり、設定する目標の難易度が高いこともMBOとの違いに挙げられます。
OKRについては以下記事でも解説していますので参考にしてください。
目標管理を導入するメリット
人事考課に活用できる
目標管理を導入することで、目標とその達成度合い(結果)が可視化できるので人事考課の参考にすることが可能になるというメリットがあります。
実際に人事考課に目標管理を取り入れている企業は多く、評価内容を目標の達成·未達成に関連づけて具体的に説明できることから社員の評価に対する納得度が向上するというメリットも生まれます。
人材育成が可能に
目標管理は社員自らが目標を設定し、その目標を達成するためにどんな課題があり、それをどうやって解決すればいいのかを自ら考えるため、社員の自己成長を促すことができるというメリットがあります。
目標設定の際には上司も一緒に目標を共有するので、決して無理難題な目標にならず社員の頑張り次第で達成できる目標を設定することができます。
自らの努力や工夫で目標を達成する経験を繰り返すことで、能動的に考え行動することができる人材の育成が可能となります。
社員のモチベーション向上を実現
目標管理を行うことで、社員は自身で設定した目標を達成することが企業に貢献していると感じることができ、上司に評価されることでさらにモチベーションを高めることができます。
目標を達成するほどに、企業に対するエンゲージメントも向上し、自分が企業にとって必要な存在であると自信を持つことができるというメリットも生まれます。
目標管理や人材管理についてはこちらの記事も参考にしてください。
目標管理導入の成功例
健康食品会社Aの場合
A社では、目標管理やスキル管理がExcelで行われており、情報が一箇所に集約されていないことが課題となっていました。また、紙とExcelを中心に評価業務を行っており、業務における工数が膨大にかかっていたことも課題でした。
これらの課題を解決するため、目標管理システムの導入を行い社員情報の一元管理を実現しました。
結果として、社員情報への素早いアクセスや社員情報の人材育成への活用を可能とし、評価作業における工数も大幅に削減することができました。
エステサロン運営会社Bの場合
全国で美容脱毛サロンを経営するB社では、以前から評価システムを利用していましたが、既存のシステムではエンジニアがいないと運用するのが難しく、システムそのものが使いにくいという課題が挙げられていました。
使いにくいシステム故に、社員からも評価業務を後回しにされてしまう傾向ができており、これを改善するために自社評価システムに対応できる目標管理システムを導入しました。
結果として、目標管理システムを導入したことで、評価システムが使いやすくなり社内の評価フローをしっかりと回すことができるようになっただけでなく社員一人ひとりの意識改革にもつながりモチベーションの向上にも繋がるようになりました。
目標管理における、目標設定の方法、評価・運用方法
目標の設定方法
目標管理を成功させるためには、目標の設定方法が重要です。
いきなり社員に目標を設定させるのではなく、企業単位·部署単位で目標を設定し、社内で共有することから始めます。
社員が設定する目標は組織としての目標に連動しているものでなくてはならないので、企業としての目標を共有することで全社一体となって目標達成に取り組むことが可能となります。
社員が設定する目標は上司も一緒に確認し、努力次第で達成できる程度の目標になっているかを確かめましょう。社員が自ら目標を設定し、達成のために努力することで強制されているという意識がなくなり、自分の努力が組織の成長につながっているという意識改革にもつながります。
目標設定においては、上司と本人それぞれが目標達成までのビジョンをイメージできていることが重要で、それぞれの認識にズレが生じると自己評価と上司からの評価にギャップが生じ、不信感を抱かれてしまったりモチベーションの低下に繋がってしまうので注意が必要です。
目標管理の評価·運用方法
目標管理を円滑に進めていく上では、上司が逐一監視しコントロールするのではなく、あくまで社員自身が目標を管理し達成できるようにサポートに徹することが重要です。
そのためには進捗管理に注力し、進捗確認の時点で目標が達成できそうか、足りない部分があれば軌道修正を行った方が良いかを適宜アドバイスしましょう。
部下自身がPDCAをしっかりと回すことができれば自ずと目標の達成に近くはずです。
最終評価の段階では、部下と一緒に目標達成度合いを分析してしっかりとフィードバックを行いましょう。目標達成に至った要因や足りなかった部分を具体的に説明し、次回の目標設定·目標達成にはどのように改善していけばいいかを明らかにすることで、部下の自己成長を促すことができます。
目標管理を成功に導くためには上司のサポート力が重要となります。
目標管理をする上で便利なおすすめツール
カオナビ
特徴
カオナビは顔写真を用いて人材管理ができるタレントマネジメントシステムです。
顔写真を用いて人材管理·目標管理が行えるため、テレワークのような顔の見えない勤務形態でも効率的に人材情報の管理が可能という特徴があります。
企業規模を問わず幅広い業界から導入されており、導入社数は1,800社を突破しています。
主な機能
- 顔写真による人材データベース
- ソート機能
- ツリー図作成機能
- 評価ワークフロー
- 社員アンケート機能
- 配置バランス図機能
月額料金 | 要問い合わせ |
初期費用 | 要問い合わせ |
無料トライアル | あり |
2021年1月現在/詳細は公式サイトを確認
画像·データ出典:カオナビ公式サイト
banto(バントウ)
特徴
bantoは目標管理における進捗管理を効率化することが可能です。
部下はPC以外にスマホからも日報を提出することができるので、移動先やテレワークでも手軽に進捗報告することができ、日報未提出者にはチャットボットが自動で催促してくれるので上司がわざわざ確認をとる手間を効率化できます。
Slackなどのビジネスチャットツールとの連携ができることも特徴的です。
主な機能
- OKR目標管理機能
- KPI目標管理機能
- 目標紐付け機能
- 進捗フィード機能
月額料金 | 300円/人 |
初期費用 | 19,800円 |
無料トライアル | あり |
2021年1月現在/詳細は公式サイトを確認
画像·データ出典:banto公式サイト
Resily(リシリー)
特徴
ResilyはOKRの管理に特化した目標管理システムです。
目標管理における進捗状況の管理を可視化できることで目標達成までのプロセスが把握しやすくなります。
OKRがなかなか社内に浸透しないという企業や目標達成までのステップを可視化できないといった課題を抱えている方におすすめなサービスです。
主な機能
- OKRマップ機能
- チームミーティング支援機能
- 1on1支援機能
月額料金 | 要問い合わせ |
初期費用 | 要問い合わせ |
無料トライアル | 14日間無料 |
2021年1月現在/詳細は公式サイトを確認
画像·データ出典:Resily公式サイト
Goalous(ゴーラス)
特徴
GoalousはSNS型の目標管理ツールです。
GKAというOKRをベースにして独自の目標管理手法を取り入れることで、よりチームとしてのコラボレーションを意識した行動ができるようになります。
写真を利用した進捗報告やコメント機能で適宜フィードバックを受けながら目標達成に取り組むことができます。
主な機能
- ゴール設定機能
- 評価機能
- メッセージ機能
- サークル機能
月額料金 | 1,225円/人 |
初期費用 | 180,000円 |
無料トライアル | あり |
※年間プランの場合(導入事例に協力することで初期費用値引きあり)
2021年1月現在/詳細は公式サイトを確認
画像·データ出典:Goalous公式サイト
HRBrain
特徴
HRBrainは人事評価から人材管理までを可能とするクラウド型の人材管理システムです。
目標管理やスキル管理人事評価管理やタレントマネジメントなど人事業務における幅広い領域をカバーすることができるのでタレントマネジメントのサービスにおいて高い顧客満足度を達成しています。
主な機能
- 人事評価管理
- スキル管理
- 目標管理
- 人事制度構築
- 人事育成戦略
月額料金 | 69,800円〜 |
初期費用 | 要問い合わせ |
無料トライアル | あり |
2021年1月現在/詳細は公式サイトを確認
画像·データ出典:HRBrain公式サイト
その他の目標管理ツールについてはこちらの記事で紹介しています。
目標管理をする上での留意点
個人の目標を組織の目標と関連づける
目標管理において重要なのは、個人の目標が達成されることによって組織の目標達成に貢献することです。
部下の目標設定においては、必ず上司も確認し、達成可能な範囲の目標で、組織の目標にも結びついている目標設定ができているかをチェックしましょう。
目標管理を評価制度にしない
目標管理を人事考課の参考にする企業は多いですが、目標管理そのものが評価制度になってしまうケースも少なくはありません。
目標管理自体が評価制度となってしまうことで、目標達成が組織の成長につながるという目標管理の意義を見失ってしまう可能性があります。
また、目標を設定する際に、達成しやすい目標しか設定しなくなってしまう危険性もあり、組織の成長につながりにくくなってしまうので、目標管理は評価制度の参考にするという線引きを間違えないようにしましょう。
フィードバックを必ず行う
設定した目標を達成するためには、進捗確認の際にフィードバックを行うことが重要です。
このままのペースで目標が達成できそうなのか、達成が難しい場合はどこが足りないのか、どんな工夫を行ったのかなどしっかりと部下の意見を聞いた上で具体的なフィードバックを行いましょう。
また、適宜フィードバックを行うことで部下とのコミュニケーションをとることもできるため、人事評価の際も部下からの不信感を抱かれる危険性が低くなります。
目標管理に対する理解を深めてもらう
新しい制度やシステムを導入する際は、関わるメンバーがしっかりと制度を理解していないと正しい運用ができず浸透せずに終わってしまう可能性があります。
管理制度を導入する前に導入の目的や導入することで得られるメリットなどについてしっかりと説明して社員からの理解を得ましょう。
管理職においては、勉強会や人事のプロを招いてセミナーを行ってもらうなどするとより効果的です。
目標管理を成功に導くためには
目標管理を成功させるためには、目標管理ツールの導入がおすすめです。
クラウド型のシステムも多く登場しているので、スマホからの利用も可能で従来のシステムより安価に導入できるというメリットもあります。
導入に対するサポートや運用方法の支援なども行っているので目標管理を初めて導入するという方にもおすすめです。
本記事で紹介した目標管理ツールや運用にあたっての注意点などを参考にして、是非自社にマッチした目標管理ツールを導入してください。