現代社会を生きていくには、ストレスとの上手な付き合い方が求められます。
ストレスにさらされがちな日常生活や仕事において、自身のメンタルを守るにはテクニックが必要です。
コーピングとはストレスに対処し、メンタルを守る手法です。
当記事では、コーピングの概要や活用方法、企業におけるストレス対策の導入事例について解説いたします。
コーピングとは?言葉の意味と概要を解説
コーピングとは、「cope」という単語に由来するメンタルヘルス用語です。
「cope」は、困難なことを上手く処理するという意味をもちます。
転じて、ストレスに対処しようとすること、またその行動を「ストレスコーピング」といいます。
ストレスに対して何らかの行動を起こし、原因を取り除いたり、緩和させたりするストレスマネジメントの手法です。
コーピングが注目されている背景とは?
コーピングが注目される背景には、従業員のメンタルヘルスへの取り組みが強く求められていることがあります。
2015年にストレスチェック制度が導入され、企業が従業員のストレスに配慮する重要性が社会全体に認知されました。
多くの人が仕事上、何らかのストレスを抱えています。
適度なストレスはパフォーマンスや意欲の向上につながりますが、過度なストレスは心身不調の原因となります。
ストレスが高じ精神疾患や脳・心臓疾患を発症すると、職場からの長期離脱を余儀なくされます。
また、精神疾患による自殺に発展するケースもあり、大きな社会問題にもなっています。
従業員のストレスを放置することは、企業にとってのリスクです。
従業員のストレスを見過さず、対処する取り組みのなかで、コーピングは一つの手法として注目を集めるようになりました。
コーピングの種類とそれぞれの役割について
コーピングにはいくつかの種類があり、それぞれに発揮する効果や役割は違ってきます。
ここでは、コーピングの種類とそれぞれの役割について見ていきます。
問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングは、ストレスの原因そのものに働きかけ、原因を排除することで解消を図るものです。
例えば、ハラスメントが原因でストレスを感じているのであれば、ハラスメントをやめさせるといった方法です。
問題に直接働きかけるため、比較的ハードルが高い手法ですが、根本的な解決につながるメリットがあります。
情動焦点型コーピング
情動焦点型コーピングは、ストレスを受けている自身の内面のコントロールにより緩和を図る手法です。
原因に対する自身の考え方を変え、ストレスを軽減させる対症療法といえます。
原因の排除が困難な場合や、長期間にわたりストレスにさらされるような状況に有効です。
根本的な解決には至りませんが、現実的にもっとも多く活用されるコーピングの手法といえるでしょう。
ストレス解消型コーピング
いわゆる「気分転換」が、ストレス解消型コーピングにあたります。
例えば、「旅行に出かける」「親しい友人と飲みにいく」といった行動です。
軽いランニングやヨガといった運動もストレス解消に効果的でしょう。
根本的な解決は無理ですが、日常的に簡単に実践できる点がメリットです。
自分なりの方法を確立させておけば、ストレスをため込むことなく、心身の健康を保つのに役立ちます。
コーピングの具体的なやり方
次にコーピングの具体的なやり方について見ていきます。
コーピングリスト
コーピングリストとは、ストレスを感じたときに行う行動を具体的に書き出し、リストアップしたものです。
例えば、「ストレスを感じたら甘いチョコレートを口に入れる」というような、具体的な行動を100個くらいリストアップします。
そのリストを常にもち歩き、ストレスを感じるたびに実践するというものです。
具体的な行動は、簡単に自己完結できるものが望ましいでしょう。
物理的に難しい場合は、「宝くじの高額当選を妄想する」といったようなことでも構いません。
ストレスが小さいうちに、その場で潰してしまう効果が期待できます。
輪ゴムテクニック
輪ゴムテクニックとは、一瞬でネガティブな意識を断ち切る仕組みを習慣づける手法です。
用意するのは輪ゴムを一本、常に自分の手首にはめておきます。
ネガティブな感情に支配されたとき、考えても解決しないのに深く考えてしまうようなときに、手首の輪ゴムをパチンと弾きます。
そのとき生じた痛みをきっかけに、ネガティブな意識を断ち切るようにトレーニングします。
習慣づけることで、条件反射的に気分転換を行えるようになり、ストレス状態に長くとどまることが防げます。
コーピングを活用したストレス対策の事例
企業は従業員のストレスに配慮し、対策を講じる義務があります。
ここでは具体的なストレス対策として、取り組むと良い事例を紹介します。
メンター制度
困ったときに相談できる「メンター」を、あらかじめ決めておくという方法です。
新入社員に先輩従業員を相談相手としてつけるケースが多く、慣れない環境での不安を取り除く効果が期待できます。
新入社員でなくても、メンターの存在は心強いものです。
少なくとも誰にも相談できず、一人で抱え込むといった状況は避けることができます。
1on1ミーティング
上司と部下で、定期的にマンツーマンの面談を行う手法です。
可能であれば1週間に1回、30分程度の面談機会を設け、部下の抱える悩みや課題を共有します。
ポイントは、部下の側に話をさせることです。
話すことで感情が整理できストレスの軽減が図れます。
上司の側がアドバイスに終始すると、失敗の原因になるので注意が必要です。
心理カウンセリング
産業医や保健スタッフなど、専門家に話を聴いてもらう機会を設けます。
上司や先輩といった身近な存在に相談するのとは違い、本音を出しやすくなるメリットがあります
また、専門家としての客観的な見解・アドバイスを聴くことは安心感につながるものです。
定期的な実施や、相談窓口の常設といった取り組みが望ましいでしょう。
研修の定期開催
研修を定期的に開催し、ストレスを知識として学び、演習を通して対処の方法を実践します。
繰り返し実践することで、ストレスに関する知識や対処の方法を身につけてもらいます。
こうした研修を定期的に開催することは、従業員のストレスに対する会社の取り組みを示すことにもなります。
従業員の安心感につながるといった効果も期待できます。
職場環境の工夫
快適な空調や照明といった基本的な部分はもちろん、業務に集中できるデスクや椅子を用意するといった配慮も必要です。
従業員同士、コミュニケーションが取りやすくなるような、スペースを設置するといった工夫も有効です。
まとめ
従業員のストレスを放置することは、企業にとっての重大なリスクとなります。
コーピングをはじめとした、ストレスへの取り組みを行うことは、リスク回避だけでなく、生産性の向上といった良い影響にもつながっていきます。
個人としても、ストレスに対処するテクニックを身につけることは、穏やかな日常生活を送るのに欠かせません。
正しく学び、日々実践してみてはいかがでしょうか。