営業職はなぜ人気がないのか? – 営業職のキャリアパス再考

営業職は人気がない?

営業職として働いている候補者にお会いする機会がしばしばある。特に20代の若い方に顕著な傾向だが、多くの方は次は営業以外の職種で働きたいと言う。なぜそう考えるのか、本音ベースで理由を伺ってみると、「プレッシャーがキツい」、「キャリアの広がりがない」、「企画職の方が専門性が高い」というような声を聞くことが多い。

しかし、このような場合はいわゆる「逃げ」の転職に繋がりかねないので、じっくり考えて頂くことをお話することが多い。

そもそも、営業職は本当にキャリアの広がりがなく、企画職に劣る職種なのだろうか?また、営業と企画職は分断したキャリアなのか?いずれも、僕はそうは思わない。こういった考えの背景には、自身で営業という枠・職務範囲を限定してしまっていることが起因しているのではないかと考える。

新規事業の成否は結局、営業力で決まる!

営業職のキャリアを考えるにあたり、冨田賢さんの著書『新規事業立ち上げの教科書』が興味深い。冨田氏は、”事業提携(アライアンス)の専門家”として、アライアンス活用を中心とした新規事業立ち上げのコンサルティングを、ここ7年間で150社以上の企業に対して行っているそうだ。

冨田氏は、著書の中で以下のように述べている。

・新規事業を立ち上げるスキルは、ビジネスリーダーになるためには必須です。

・新規事業は、最後は営業力で決まる。

・製品やサービスの販売だけでなく、アライアンスにおける提携先の探索・発掘、自社の”強み”をアピールして交渉したりする際にも、営業力が必要となります。

新規事業チームの構築にも、営業力のある人 、あるいは営業経験のある人をメンバーとしていれることが重要

・「実は、新規事業立ち上げのスキルで最も大切なものは、外部の人脈を作ってくる能力、提携先を見つけてきて交渉できる能力、企画・開発したサービスや製品を売ってくる営業の能力なのです。つまり、営業力です。」

このように、営業職の役割は多様であり、営業というスキルが活かせる機会は豊富にある。

営業職のキャリアパス

より具体的には、営業職のキャリアパスとしては、大まかに分けると4つあるのではないかと考える。それぞれ、マネジメント職、スペシャリスト職、事業開発職、マーケティング職だ。

それぞれの主な役割・特徴は、以下の通りだ。

・マネジメント職…チームもしくは事業部の営業数字達成の責任者。営業戦略策定・推進、KPI設定や部下のモチベーション管理、育成、採用など。

・スペシャリスト職…トップセールスの人。たとえば、某大手不動産販売会社のトップセールスは、社長より年収が高いと言われている。その人に辞められたら会社としては大きな損失となり困るので、出勤時間などかなり自由なスタイルを認めているらしい。ただ、往々にして、トップセールスの人がマネジメント職に「昇進」する場合が多いだろう(そこで結果が出るかどうかは別問題だと思うのだが)。

・事業開発職…新規事業立ち上げ、アライアンス業務(ビジネスパートナーへの交渉)含む。カッコ良く言えば、ビジネスディベロップメント職。新規顧客獲得〜顧客層拡大およびサービス企画もミッションに含まれる。

・マーケティング職…営業職との親和性を考慮すると、いわゆるセールスマーケティング(販売促進)業務がメインになることが多いだろう。また、IT業界では、プリセールス職に転身するケースもある。

前半2つは営業寄り、後半は企画寄りと言える。いきなり別ポジションで転職することは、即戦力採用が原則の転職市場ではレアケースなので、基本的には、現職で類似職務の経験を積み、そこで出来るだけ成果を出すことが求められる。もちろん肩書きの問題ではなく、自身がその役割を担っているかどうかが重要だ。現在営業職の方で、これらの4つのどの役割も担っていない場合は、自身がどの方向に向かっているのか、改めて考えてみることをお勧めしたい。

営業職としてのリブランディングを

特に僕が主に担当しているWeb業界は、優秀な技術者(エンジニア、クリエイター等)と上記4職種を含む広義の「営業」担当がいれば、基本的な部分は成り立つものだ。その意味で、とても重要な職種であることは間違いない。営業というとキャリア的に「下」に見られがちだが、自分次第でそのキャリアを広げることは、いくらでも可能だと思う。