ROEとは?計算式での求め方、目安、ROAとの違いに関して

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かつてなら大手企業や成長著しい有名企業に投資すれば安泰と考えられていました。
ですが、近年は大手企業や業績好調だった企業でも突然として経営状況が悪化することや倒産の危機に陥ることも少なくありません。
大規模地震や大洪水などの史上稀に見る自然災害に遭遇したり、世界規模の感染症拡大で事業が立ち行かなくなったり、外部からの影響で突然として業績が悪化することも少なくありません。
一方で、システム障害や個人情報の漏洩、役員の不祥事や従業員の不正取引など信頼を揺るがすようなトラブルを引き起こして、不買運動が起きることや業務停止命令などを受けて経営が悪化することもあります。
社内外で巻き起こるトラブルやアクシデントをはじめ、事業の失敗などによって、大きな損失が出る場合や業績が悪化しても、株式が紙切れになることはないのか、財務上の信頼が高いかは、投資家にとって、重要な判断指標になります。
投資指標として従来は株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)などの伝統的な指標が用いられてきましたが、近年、注目されているのがROEです。
ROEとは、どのような指標なのでしょうか。

ROE(自己資本利益率)とは?その意味を解説

ROEはReturn On Equityの略称で、日本語では自己資本利益率となります。
日本ではバブル崩壊後の1990年代半ばから注目されるようになった、投資指標の一つです。

従来の投資指標について

従来利用されてきた投資指標について、まず、おさらいをしておきましょう。
株価収益率(PER)はPrice Earnings Ratioのことで、株価がその企業の1株あたり当期純利益の何倍にあたるかを表します。
企業の収益力をもとに、株価の妥当な水準を判断する指標です。
株価純資産倍率(PBR)はPrice Book-value Ratioのことで、株価がその企業の1株あたり純資産の何倍になっているかを表します。
企業の簿価ベースの純資産から株価の妥当な水準を判断する指標です。

ROEと従来の投資指標との違いについて

これに対して、ROEは自己資本に対する純利益の割合を示します。
株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)が株価を計算の対象としているのに対し、ROEは株価を直接計算の対象とする投資尺度ではない点が、従来用いられていた伝統的な指標とは異なります。
ある企業の自己資本に対する収益力を確認することで、投資対象として望ましいかを判断する指標です。
投資判断の見立てとしては、ROEが高いほど、自己資本を効率良く使って利益を上げられている企業だと判断され、投資対象として望ましいといった使い方ができます。

ROEの目安について、大手企業の参考ROE

2012年12月に発足した第2次安倍政権において掲げられた成長戦略においては、ROEについても言及がなされました。
企業の成長戦略としてグローバル水準のROEの達成が目標として掲げられたのです。
そのため、日本を代表する大手企業を中心に多くの国内企業が経営指標として重要視すべき指標としてROEを設定するとともに、ROE8%以上という目標値が掲げられたのです。
日本の東証1部上場企業のROEは6%~8%前後を推移しています。
これに対して2011年以降、欧米企業のROEの推移を見てみると、ドイツは8%~12%、アメリカは14%~18%となっています。
つまり、日本の大手企業のROEは、アメリカやドイツに対して低い水準となっているのです。

ROEの求め方とは?計算方法を解説

ROEの計算式は以下の通りです。

自己資本利益率(ROE)%=当期純利益/自己資本×100

自己資本については期中に変動することもあるため、期首と期末の平均値を用いるのが一般化しています。
ROEの計算式を分解してみると、企業の財務状況がより細かく見えてきて、その企業の弱い部分や伸ばすべき部分などが把握できます。
具体的には次のように3つの要素に分解して、検討することがおすすめです。

自己資本利益率(ROE)=当期純利益/自己資本(売上高純利益率)=当期純利益/売上高(総資産回転率)=売上高/総資産=総資産/自己資本(財務レバレッジ)

「売上高純利益率」「総資産回転率」、そして自己資本比率の逆数である「財務レバレッジ」の3つの構成要素に分解してみました。
この結果から、日本の大手企業のROEがアメリカやドイツといった欧米企業よりも低くなる、主な要因は売上高純利益率が低い点が考えられます。

ROEを高めるには?

逆に自己資本利益率(ROE)を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。
まず、第一に分解式の分子にある当期純利益を高めることが一つのポイントです。
当期純利益を高めるにはコストを削減する、コストパフォーマンスの高い設備投資を実施する、そして、M&A(企業の合併·買収)を実施してシナジー効果をもたらすなどが考えられます。
第二の方法としては分母にある自己資本を減少させることです。
そのためには、配当金を増額して株主に還元する、自社株買いを行うなどし、株主還元の強化を図ることがポイントになります。

よく間違われる!?ROEとROAの違いについて

ROEとROAは英語の表記が紛らわしいうえ、同時に語られることも多いのでよく間違われる指標です。
ROAとはReturn On Assetの略称で、日本語では総資産利益率となり、計算式は以下の通りです。

ROA(%)=当期純利益÷総資産×100

利益を総資産もしくは総資本で除したもので、総合的な収益性の財務指標として用いられます。
企業に投下された総資産総資本が、企業が利益を獲得するために、どれだけ効率的に使われたかを表す指標です。
ROAを高めるには、コストの削減を図って利益率を改善させるか、売上高の増加を目指して、回転率を上昇させることが必要になります。
ROEとROAの大きな違いは、分母に来る総資産と自己資産の違いです。
ROEは自己資本をどれだけ効率的に利用しているかを示す指標ですが、ROAは自己資本か他人資本かは問いません。
あらゆる資産を合計した総資産に対して、どれだけ利益を出しているかを確認する指標です。
ROEやROAが日本より活用されているアメリカにおいては、企業の収益性を判定する指標として、ROAもROEの双方が用いられることも少なくありません。

ROEを求めることで、企業が得られることとは?

ROEを求めることで、企業は自己資本をどれだけ有効活用できているかを把握することができます。
活用できていない場合には対策を実行し、ROEを高めて経営体質を改善させる道が開けます。
ROEを高めるには、稼ぐ力を高めて売上高純利益率を向上させるか、配当を増加させることや自社株買いを行って自己資本を減少させることがポイントです。
稼ぐ力を高めて売上高純利益率が高まれば、市場での評価が高まり株価上昇が望めます。
配当金の増額は既存株主にとってはメリットですし、自社株買いをすることでも株価上昇が望めます。
つまり、ROEを高めることは株主のメリットが高いので、株主離れを防ぐにも効果的です。

これからの投資にROEの把握は不可欠

ROE(自己資本利益率)は自己資本に対する純利益の割合を指し、ROEが高いほど自己資本を効率良く使って利益を上げられている企業だと判断されます。
もっとも、投資判断にあたっては株価がすでに高いROEを織り込み済みですでに値上がりしていないかを調べることや新型コロナウイルスの世界的拡大など企業が高水準のROEを長期間にわたって安定的に維持するのが難しくなっている世界経済の情勢なども考慮することが大切です。
そのうえで企業が長期的な視点から継続的にROEの向上に取り組んでいるかを、しっかりとリサーチして投資の適否を決めましょう。

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