なぜネット選挙は実現されない?コロナ禍でも投票所に行く理由

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なぜネット選挙は実現されない?コロナ禍でも投票所に行く理由

コロナ禍で3密が問題視され、ネット選挙に言及する報道も多く見られます。先日、ホリエモンこと堀江貴文氏はネット選挙に触れて「技術的に可能だが、ネットやSNSを使いこなせない政治家たちに不利。だから導入が進まないのだろう」と主張しました。ホリエモンの見立ては正しいのでしょうか。一般的に言及される問題、そうでない問題を含めて、ネット選挙が実現できない理由を解説します。

ネット選挙実現への問題点

安全性

1つめの問題は、選挙システムの安全性や信頼性の確保が難しいことです。1億人のデータベースが必要なことや、選挙期間中にシステムがクラッシュする可能性などが取り上げられます。

この議論の示すところは、あまりに技術的な認識が前時代的であることです。1億件のデータというと膨大に聞こえますが、全世界のウェブサイトは16億8000万サイトあります。またビッグデータで企業が数十億レコードを扱うことも、珍しくありません。システムクラッシュの可能性についても、冗長性の確保や多重化、分散化で十分に対応可能です。技術的に大きな問題はありません。

自由な投票を侵害する可能性

2つめの問題は、投票が自由意志によって行われない可能性です。スマートフォンから投票可能になると、候補者や支援団体が関係者を集めて、監視下で投票させる事態が危惧されています。

この問題は、ネット選挙が多くの国で実現できていない最大の原因です。国政選挙で唯一ネット投票を実現しているエストニアでは、投票をやり直せるシステムによって問題に対処しています。監視下で投票させられたとしても、あとから投票し直せるなら問題ではないというスタンスです。

法改正の必要性

3つめの問題は法律です。現在、公職選挙法第46条は「選挙人は、投票所において、投票用紙に当該選挙の公職の候補者一人の氏名を自書して、これを投票箱に入れなければならない(原文まま)」と規定しています。ネット選挙実現のためには、法律の改正が必要です。

ネット選挙が実現できない理由として、一般的に語られてきたことは「システムの信頼性や安全性」「自由意志による投票が難しい」「法律の改正が必要」という3点です。しかし解説してきたとおり、およそ解決できる問題ばかりです。「技術的な問題点はない」というホリエモンの主張は、妥当性のあるものでしょう。

ネット選挙実現の隠れたネック

ではホリエモンの言うように「既存の政治家たちに不利になる」から、ネット選挙は実現しないのでしょうか。他にも考えられる理由があります。キーワードはロックイン効果とスイッチングコスト、IT後進国の3つです。

ロックイン効果

ロックイン効果とは「消費者が特定メーカーにリピートし続ける現象」を説明した経済学用語です。例えばiPhoneからAndroidにスマートフォンを変更すると、操作などに戸惑います。覚え直すのも大変です。選挙制度制度にも、強いロックイン効果がかかっています。今まで慣習的になっているものを急遽変更しなければいけない心理的徒労は非常に大きく、適応力のある若者であればいいですがネットに慣れていない高齢層となるとそう簡単に変化に対応することはできません。

スイッチングコスト

ロックイン効果から発生する使い続けたものを変更しなければいけない大変さ、こういった大変さを「スイッチングコスト」と言います。スイッチングコストがかかることを嫌い、慣れ親しんだメーカーやシリーズを使い続ける現象がロックイン効果です。選挙制度制度にも、強いロックイン効果がかかっています。なぜならネット選挙導入にはトラブルやシステム構築、法律改正など、多くのスイッチングコストが想定されるからです。ホリエモンの言う「SNSが使えない政治家」も、SNSを覚えるというスイッチングコストを嫌ってます。

IT後進国

IT後進国というキーワードは、ロックイン効果より深刻です。現在の日本はIT後進国化が囁かれています。総務省の平成29年通信利用動向調査によれば、コロナ前のテレワーク導入率はわずか13,9%でした。IPSOS社が2011年に実施したアンケートによれば、世界的なテレワークの平均値は約17%です。

他にも5Gの敷設で韓国に先行されたり、10万円給付金のネット手続きを紙に書いて処理したりと、日本がIT後進国である証左はたくさんあります。日本がIT後進国になった原因は、ITへの投資が疎かだったからと言われます。

しかし他にも、政治がITにあまり関心を寄せていないこと、知識や知見が不足していることが大きく影響しています。2019年2月に、「国会でInternet Explorer論争と報道されました。ITへの政治の取り組みや認識は、あまりにお粗末です。

ネット選挙は本当に実現不可能なのか

ネット選挙の障害と一般的に言及される「システムの信頼性や安全性」「自由意志による投票が難しい」「法律の改正が必要」は、解決可能です。コロナ禍でもネット選挙導入の気運が盛り上がらないのは、ロックイン効果、スイッチングコスト、そしてIT後進国という理由が大きく影響しています。

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    執筆者  STRATE編集部