国による働き方改革推進、コロナ禍でリモートワークを行う人が増えたことで、「ワークシェアリング」が注目されるようになりました。
イギリスやドイツなど海外ではワークシェアリングの導入が進んでおり、良い実績を上げています。
しかし、日本ではまだまだ導入している企業が少ないのが現状です。
そのため、ワークシェアリングがどんなものなのかわからない、導入よるメリット・デメリットが気になるという方も多いのではないでしょうか?
今回は、ワークシェアリングの概要、目的などをわかりやすく解説していきます。
また、ワークシェアリングの事例もいくつかご紹介いたしますので、導入をお考えの方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
ワークシェアリングとは?概要をわかりやすく解説
最初に、ワークシェアリングの概要についてみていきましょう。
ワークシェアリングの意味
ワークシェアリングは、英語で「work sharing」と表記します。
「work」は仕事、労働、作業などを意味する単語です。
「sharing」には、共有するという意味があります。
つまり、ワークシェアリングを直訳すると、「仕事を共有する」です。
ビジネスにおいて、ワークシェアリングは、「労働者同士で雇用を分け合う」という意味で用いられています。
ちなみに、ワークシェアリングは、「job sharing」(ジョブシェアリング)という名称で呼ばれることもあります。
ワークシェアリングのメリットとデメリットについて
ワークシェアリングには、メリットとデメリットの両方があります。
ワークシェアリングのメリット
- 労働環境の向上
ワークシェアリングのメリットは、労働環境が向上しやすくなることです。
従業員1人あたりの労働時間が減るため、長時間労働が改善できます。
- 従業員の定着率がアップする
労働環境が良くなることで離職率が下がり、従業員も定着しやすくなります。
有能な人材を失うリスクが減らせることは、ワークシェアリングの大きなメリットと言えるでしょう。
- それ以外のワークシェアリングのメリットについては、以下の通りです。
- 従業員側は本業以外に副業もしやすくなる
- 企業側は従業員数を増やせる
- 病気、育児、介護などの事情を抱えている人たちも働きやすくなる
- プライベートを楽しむ余裕が生まれて国全体の景気向上が期待できる
ワークシェアリングのデメリット
- 給料が減る
ワークシェアリングのデメリットは、給料が減る可能性があることです。
労働時間が短くなるほど、従業員は受け取れる給料額が下がってしまいます。
お金をたくさん稼ぎたいと思っている従業員にとっては、大きなデメリットと感じてしまうことでしょう。
- 低賃金労働者が増える
ワークシェアリングを導入する企業が多くなることで、低賃金労働者が増えるというデメリットもあります。
- 採用コストがかかる
企業側にとっては、従業員の採用コストがかかることがデメリットとなります。
ワークシェアリングのために多くの人材を採用すると、給与計算や人員管理の手間もかかってしまい、大きな負担となってしまいます。
ワークシェアリングの種類・分類・タイプについて解説
ワークシェアリングは、内容によって、以下の4つに分類されます。
種類ごとに、ワークシェアリングの特徴について見ていきましょう。
①雇用維持型(緊急避難型)
雇用維持型は、従業員を解雇せずに、1人あたりの労働時間を減らすために行われるワークシェアリングです。
企業の業績が悪くなった際などに、従業員の雇用を維持する目的で行われることが多いです。
この方法を導入することで、人材の流出を防ぎながら、業績回復に取り組むことができます。
②雇用維持型(中高年対策型)
雇用維持型は、中高年者の労働時間を短くすることや雇用を増やすことを目的として行われるワークシェアリングです。
この雇用維持型の対象となる中高年者は、定年以上の方になります。
定年退職した従業員に対して、短い労働時間で働ける環境を用意することで、企業側は、ベテラン人材を確保しやすくなるのです。
雇用者側にとっては、定年後も仕事を得ることで、老後の資金を確保することや生きがいを感じながら生活できるというメリットが得られます。
③雇用創出型
雇用創出型は、すでに雇用されている従業員の労働時間を短くすることで、新たな雇用を創出するために行われるワークシェアリングです。
新規雇用の機会が増えるため、失業者対策にも有効的な方法と言えます。
④多様就業型
多様就業型は、フレックスタイム、在宅、パートタイムなど、多様な働き方で雇用するワークシェアリングです。
フルタイム勤務以外も選べるようになることで、従業員にとって働きやすい環境を作ることができます。
企業側にとっても、優秀な人材が確保できるというメリットがあります。
ワークシェアリングの主な事例を紹介
最後に、海外や国内企業のワークシェアリングの事例について、ご紹介いたします。
①オランダの事例
オランダでは、資源エネルギーブームが去った1980年代前半に、大不況を迎えました。
その際に行ったのが、「オランダ・モデル」と呼ばれる労働市場改革でした。
この改革によって、フルタイム勤務以外の働き方が認められるようになったのです。
その結果、パートタイム労働者が増え、失業率が大幅に改善しました。
このような労働市場改革は、一般企業のほかに、さまざまな分野で導入されるようになり、今では公務員や教師などもパートタイムで働いています。
②株式会社ベネッセコーポレーション
進研ゼミで有名な株式会社ベネッセコーポレーションは、他社に先駆けて、1992年に短時間正社員制度を導入し、育児中の女性が働きやすい環境を作ってきました。
このような取り組みを行った結果、女性社員が定着しやすくなり、全体の半数を占めるようになったのです。
女性管理職の割合に関しても、他企業に比べて圧倒的に高い比率となっています。
③株式会社エス・アイ
株式会社エス・アイは、20年以上前から多様就業対応型ワークシェアリングを導入してきました。
複数の従業員で業務を共有化することで、技術力の孤立化、無駄な残業の発生、集中力の低下などを防いでいるのです。
正社員とパートタイマーとの格差問題を解決するために、全社員時間給制度も導入しています。
そのほかにも、従業員自身が出勤退勤時間を選べる「自由出勤制度」、高齢者や障がい者が長く働くことができる「エイジフリー制度」などさまざまな制度を導入して、従業員が働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
メリットデメリットを理解してワークシェアリングを導入しよう
今回は、ワークシェアリングについてご紹介しました。
ワークシェアリングを導入することで、労働環境向上、従業員の定着率アップ、多くの従業員を雇用できるなどのメリットが得られます。
ただし、給料が減る、低賃金労働者が増える、採用コストがかかるなどのデメリットもあるので、注意が必要です。
ワークシェアリングは、「雇用維持型」(緊急避難型)、「雇用維持型」(緊急避難型)、「雇用創出型」、「多様就業型」の4つのタイプがあり、それぞれに特徴や目的が異なります。
ワークシェアリングを導入する際には、各タイプの特徴をしっかり把握して、海外や各企業の事例も参考にしたうえで、自社に合ったものを選ぶようにしてください。