アーリーアダプターという言葉は、一般的には聞き馴染みがない言葉です。
しかし、マーケティングの分野ではよく耳にします。
新製品や新サービスが世の中に定着する過程で、重要な役割を果たすといわれています。
当記事ではアーリーアダプターの概要、見つけ方や上手に獲得して製品を普及させた事例を解説します。
アーリーアダプターって何?言葉の意味と特徴を解説
アーリーアダプターとは、イノベーター理論により分類される一定層の呼び名です。
製品やサービスの普及に重要な役割を果たすとされ、マーケティングにおいて重視されます。
イノベーター理論とは
まずはイノベーター理論について解説が必要です。
イノベーター理論は、1960年代にスタンフォード大学の社会学者である、エベット・M・ロージャース教授が提唱しました。
新しい製品やサービスが世の中に受け入れられる過程を、5つの段階に分類しています。
1.イノベーター(Innovators:革新者)
2.アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用層)
3.アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随層)
4.レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随記層)
5.ラガード(Laggards:遅滞層)
アーリーアダプターは、この分類の2番目に位置します。
アーリーアダプターとは
イノベーター理論におけるアーリーアダプターの特徴を見ていきます。
アーリーアダプターは、新しい製品やサービスが世の中に知れ渡る前に、いち早く導入し活用する層です。
常に最新の情報に触れており、流行に敏感で先見性をもっているのが特徴といえます。
単なる「新しいモノ好き」とは違い、製品やサービスを導入する際には、その有用性と価値を冷静に判断します。
アーリーアダプターは、的確な判断のもと、革新的なサービスをいち早く導入し成果を上げます。
こうした成果が多数派である追随層に影響を与え、製品やサービスの普及につながっていくのです。
アーリーアダプターとイノベーターやアーリーマジョリティとの違い
ここでは、イノベーターとアーリーマジョリティとの違いについて見ていきます。
イノベーター
イノベーターはもっとも少数派で、いわゆる「マニア」と呼ばれる層です。
最新のテクノロジーそのものに興味があり、誰よりも早く触れてみたいという欲求を強くもっています。
製品やサービスがもたらす有用性には無頓着である点が、アーリーアダプターとの違いです。
イノベーターは、「いち早く自分の手で試すこと」そのものを目的としているのが特徴です。
アーリーマジョリティ
アーリーマジョリティは比較的慎重派でありながらも、平均より早い段階で導入を決める層です。
アーリーアダプターの動向に影響され導入を決めることが多く、製品やサービスの成長期を担います。
この層に受け入れられると普及が加速することから、ブリッジピープル(普及の架け橋となる存在)とも呼ばれます。
アーリーアダプターはどのくらいいるの?全体の中での割合について
イノベーターからラガードまでの各層に受け入れられることで、その製品やサービスは100%世の中に定着したといえます。
製品やサービスの定着に大きな影響を与える、アーリーアダプターはどれくらいの割合を占めるのでしょうか。
イノベーター理論における各層の割合
イノベーター理論における各層の割合は以下の通りです。
イノベーター
2.5%
アーリーアダプター
13.5%
アーリーマジョリティ
34%
レイトマジョリティ
34%
ラガード
16%
初期段階で導入を決める、イノベーターとアーリーアダプターを合わせると16%となります。
世の中に新製品や新サービスが定着するには、この16%の層に受け入れられることが重要とされます。
これは「普及率16%の理論」と呼ばれています。
普及率16%の理論
アーリーマジョリティは、アーリーアダプターの動向から、その製品が導入に値するかどうかを見極めています。
アーリーアダプターは積極的に新しいモノを導入し、そのベネフィットを広く世の中に発信します。
アーリーアダプター層までの16%に普及し、安全性や利便性が確認されることで、一気に普及が加速するのです。
これが「普及率16%の理論」です。
アーリーアダプターは、いわば「毒見役」のような存在で、市場全体に安心感を与える役割を担っているといえます。
新しいモノの普及に重要な役割を果たすのは、ここに理由があるようです。
マーケティングにおけるアーリーアダプターの見つけ方
新製品や新サービスが市場に浸透し普及するために、アーリーアダプターが重要な役割を果たすのは前述の通りです。
では、マーケティング活動においてアーリーアダプターを見つけるには、どうすれば良いでしょうか。
ニーズを探る
不便さや不満を感じている人たちが、「こんな製品やサービスがあったらいいのに」と考えていたとします。
このニーズに対応する製品をリリースした場合、こうした人たちがアーリーアダプターとなります。
つまり消費者の不満や不便からニーズを知ることが、アーリーアダプターの発見につながるのです。
アンケート調査や、SNSから消費者の声を拾う「ソーシャル・リスニング」が有効な手段となります。
インフルエンサーの動向に注目する
インフルエンサーはSNS上で多大な影響力をもち、多くの消費者はインフルエンサーの動向に注目、商品やサービス購入の参考にしています。
インフルエンサーに共感を覚える人々は、アーリーアダプターとなる可能性が高いといえます。
インフルエンサーの動向に注目し、その興味に共感を覚える層を見極めることが、アーリーアダプターの発見につながります。
アーリーアダプターを上手に獲得した事例
アーリーアダプターを上手に獲得し、急速に普及したサービスの事例を紹介します。
メルカリ
メルカリは急速に普及し、フリマアプリを世の中に定着させました。
メルカリ登場以前、個人間の商品売買サービスは「ヤフオク」が中心を担っていました。
しかし、オークション形式の売買に抵抗感をもち、ハードルの高さを感じている層も一定数いたようです。
こうした人たちには、「気軽に不用品を出品できたらいいのに」という潜在的なニーズがありました。
このニーズに対応する形で、出品や発送を簡素化したメルカリが登場します。
「気軽に不用品を売りたい」というニーズをもつ層を、アーリーアダプターとして獲得した事例といえます。
Uber
スマートフォンでタクシーが呼べるサービスとして普及したのがUberです。
Uber Technologies社は、シリコンバレーという街が、「タクシーが捕まえにくい」という点に着目します。
またシリコンバレーは、IT企業が集中する世界有数の都市でもあります。
「ITに親和性が高いビジネスマン」の「タクシーが拾えないという不便」を解消するサービスとして、Uberをリリースしました。
利用者は利便性をSNSに発信、またたく間に拡散され、世界中に展開されるサービスとなりました。
アーリーアダプターとしてのターゲットを明確に絞り、成功した事例といえます。
まとめ
アーリーアダプターは少数派ながら、新しいサービスを世の中に定着させる重要な役割を担っています。
アーリーアダプターが購入を決める要素は、革新性や目新しさだけでなく、実用性が大きなポイントとなります。
製品やサービスの普及には、思わず拡散したくなるような「新しさ」と「付加価値」が求められるでしょう。