給料前払いとは?
給与の前払いは、「稼働した分であれば、支給日前でも給与を支払うべき」という合理的な考えから、ある一定条件を満たせば法律上可能となります。
今回はその労働基準法に基づく給料前払いの条件について、解説いたします。
給料前払いと労働基準法の関係
まずは、給与の前払いが認められる法的根拠を解説いたします。
以下、労働基準法第25条が、給与前払いの法的根拠として考えられます。
「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」
(労働基準法第25条より引用)
すなわち、「従業員側からの申請があった場合、非常時に限り、働いた分の給与を支払う必要がある」という意味になります。
この「非常時」とは、労働基準法施行規則第9条では、以下のように決められています。
- 労働者の収入によつて生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合
- 労働者又はその収入によつて生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合
- 労働者又はその収入によつて生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたつて帰郷する場合
(労働基準法施行規則第9条より引用)
つまり、企業が従業員から「給与の前払い」を要請された際、その理由が上記のいずれかに該当している場合は、企業は給与の前払いに応じなければならない、ということになります。
「給与の前借り」を要請したいと検討している従業員は、その理由が労働基準法施行規則第9条に定められているものに該当しているかどうか、まずは確認しておきましょう。
企業が前払いを行う際の注意点
企業が給与の前払いを行う際、必ず注意点するべき点ががあります。
冒頭で述べた通り、将来の給与分の前払いは、稼働した分に対して有効になります。
「まだ働いていない分」の給与に関しては、労働基準法に抵触してしまう可能性があるのです。
労働基準法第17条でも、
「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」
とされており、従業員・企業双方で、給与の前払いを行う前に、上記の労働基準法第17条に抵触していないか確認するようにしましょう。
給与前払いサービスとは
給与前払いの代行サービスである、「給与前払いサービス」が昨今需要を増やしており、その理由としては、
- 従業員側の資金ニーズが多様化している
- 企業側の福利厚生を充実させる狙いとして
などが挙げられます。
特にコロナ禍においては、すぐにお金が必要、というケースも少なくないため、企業側としても人材不足に拍車がかからないよう、働きやすい環境作りの一環として、給与前払いサービスを導入するケースも増えているのです。
給与前払いサービスの仕組みとは?
給与前払いサービスの仕組みは、以下のタイプに分かれます。
立替型
企業に代わって、給与前払いサービス会社が給与を立替えて従業員に支払うタイプです。
立替型の場合、従業員側が負担する手数料が割高になります。
預託金型
預託金型は、企業が給与前払いサービス会社に資金を預け、従業員がATMから給与の前払い分を引き出せるタイプです。
従業員側はATM手数料を負担するだけですので、立替型に比べて割安になります。
給与前払いサービスを利用する上での注意点は?
企業が給与前払いサービスを利用する上では、適法性に考慮する必要があります。
例えば、立替型に関しては、取引のスキームが「貸金業」に該当していないか、一方、預託金型であれば、預託運用に必要な資格を有しているかをしっかりと確認しておきましょう。
サービスを利用する際には、提供会社がどちらのタイプであるか、手数料がきちんと明示されているか、多くの企業で導入されているかなど、あらゆる視点から入念に検討しましょう。
法的な解釈などで不明な点に関しては、弁護士に相談すると良いでしょう。
まとめ
以上、給与前払いに関する法律的な観点、給与前払いサービスにおける概念や注意点について解説いたしました。
給与前払いシステムを導入しようと考えている企業の方はぜひ、参考になさってみてください。