ランチェスター戦略とは?基本と進め方のポイント、事例と欠点に関して

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ライバル企業に勝ちたい、シェアを伸ばしたいと思ったとき、営業現場や企業が事業を拡大、成長させるために採る手段として、ランチェスター戦略があります。
ランチェスター戦略の基本と進め方のポイント、メリットや事例と欠点に関してご紹介していきます。

ランチェスター戦略とは?基本を解説

ランチェスター戦略は日本のビジネスの現場で生み出された、企業間における競争において、営業や販売競争に勝ち残るための戦略です。
経営コンサルタントの草分け的存在である、故・田岡信夫氏がアメリカの軍事戦略理論であるランチェスター論をヒントに、ビジネスの競争に当てはめて生み出しました。

ランチェスター戦略が生み出された時代背景

ランチェスター戦略が生み出されたのは、1970年代前半です。
日本が戦後復興を遂げ、高度成長期を経て日本企業が大きく飛躍していく中、世界的なオイルショックが起こり、日本でも混乱が生じ、不況へと陥っていきました。
市場が縮小していく中で、企業はどうやって勝ち残るのかの方策を考えて生み出されたのが、ランチェスター戦略です。
高度成長期における経営体力やスピード勝負ではなく、もっと論理的で科学的な根拠に基づく経営戦略や営業戦略が必要であると考えられたのです。
成熟した市場においても、企業がいかに生き残っていくか、その術となるのがランチェスター戦略と言えます。

「強者」と「弱者」の理論

もともと、軍事戦略論に学びを得た戦略であるため、考えの根底になるのが「強者」と「弱者」の理論です。
戦力に勝る「強者」と、戦力が劣る「弱者」とに分類し、「同じ武器なら勝敗は兵力数で決まる」との前提のもと、どのように戦えば戦局を有利に運べるかを提唱しました。
代表的な戦略として、第1法則である弱者の戦略、第2法則である強者の戦略があります。

第1法則:弱者の戦略

同じ武器を持ち、50人の軍団と30人の軍団で一騎打ちをした場合、30人の軍団は全滅し、50人の軍団は20人残ります。
つまり、戦闘力が同じであれば、兵士が多いほうが勝利するという理論です。
ビジネスにおける商品やサービスの各市場において、シェア1位の企業は通常、規模が大きく人数も多いと想定されます。
規模の大きな市場では弱者の法則が適用されるので、人数の少ない小さな企業である弱者は負けてしまいます。
そこで、弱者は戦うべき市場を決め、その市場において1人あたりの販売能力を強化し、他社との差別化を図ることが必要です。

第2法則:強者の戦略

集団戦において、1人の兵士が複数の相手と同時に戦う場合、攻撃力は兵力数の2乗に比例するという理論です。
強者は人数では勝っているので、どのような戦略を採るべきかといえば、弱者が強者に勝とうと採った差別化戦略に対して、人数で勝負できるように持ち込むことが求められます。
具体的には弱者が実施した差別化をなくすように、強者が真似をすることです。
よく車でも家電製品でも食品や日用品、化粧品でも、ある企業が画期的な商品を生み出すと、次々に大手企業なども追随して類似商品を販売するのはこのためです。
消費者が喜ぶからとか、需要が高いからではなく、他社にシェアを取られないため、もしくは取り返すために行われる戦略となります。
真似をすることで、1社あたりの販売能力の差をなくし、人数での勝負に持ち込むことがランチェスター戦略の手法の1つと言えます。

ランチェスター戦略の進め方のポイント

ランチェスター戦略でいう強者とは、マーケットシェアが1位の企業です。
ランチェスター戦略の進め方のポイントで最も大切なのは、どんな市場でも良いので、シェアナンバーワンを目指すことです。
知名度が高く、売上ナンバーワンの大企業であったとしても、あらゆる市場で独り勝ちするケースはそう多くありません。
自社が勝負している市場を地域やターゲット、機能などで細分化し、1位になれる領域を見出して差別化戦略を採れば、1位になれるチャンスが訪れます。
市場を細かくすればするほど、中小企業でも勝てる可能性が高まります。
たとえば、家電製品市場における調理家電市場、その中のトースター市場、さらにトースト専用で勝負をかけて、大手企業を凌駕するといった手法です。
自社の立場をしっかりと理解し、弱者であると認識することで、強者にも勝つチャンスが出るのがランチェスター戦略の活用のしどころです。

ランチェスター戦略の事例をご紹介

ランチェスター戦略は日本を代表し世界でも確固たる地位を築いたトヨタをはじめ、パナソニックや武田薬品、日本生命などの大企業や、ランチェスター戦略を実施した時点ではベンチャー企業であったソフトバンクやエイチアイエス、フォーバル、数多くの中小企業で利用されてきました。
さらに海外の企業でも利用している事例もあります。
ここでは2つの事例をご紹介します。

ソフトバンクの事例

競合最大手であるNTTドコモに打ち勝つ戦略として、ソフトバンクは弱者の戦略を実施しました。
差別化戦略の手法は、他社にはない低価格を打ち出すことです。
また、ターゲットを学生に絞ったプランや、人気のiPhoneを導入したことで差別化に成功し、2014年度には携帯電話市場のトップに立つことに成功しています。

Appleの事例

Appleは強者のランチェスター戦略を展開しています。
先陣を切っている他社の商品を自社製品へと応用する戦略です。
たとえば、SONYのウォークマンからヒントを得てiPodを発表して大ヒット商品となりました。
Appleでは先に市場で人気が出ている他社商品を研究し、それを上回る自社製品を開発することで、世界市場のトップに立ち続けているのです。

ランチェスター戦略を進めるメリットについて

ランチェスター戦略は規模で劣る中小企業が差別化戦略を伴う弱者の戦略で、大手企業に勝つこともできます。
また、大手企業は強者の戦略を通じて類似商品の投入などで差別化を薄め、人数戦に持ち込むことで、シェアを守ったり、奪い返したり、トップを死守し続けることが可能となります。
特にトップ企業とそれ以外の企業との間に大きな差が出ている市場において、シェアを拡大していくにはランチェスター戦略を用いるメリットが大きいです。

ランチェスター戦略の欠点を理解しよう

弱者が強者の法則をとっても成果を上げることはできないため、勝負しようとする市場において、自社が弱者なのか強者なのかを的確に分析する必要があります。
自社の分析を間違って戦略を採っても、効果が得られません。
一方、強者が誤って弱者の法則を行っても失敗には至りません。
競合他社の勢力が拮抗している場合など、強者・弱者の分析が難しい場合には弱者の法則を選ぶほうが、シェア拡大に結び付きやすいです。

まとめ

ランチェスター戦略はアメリカで誕生した軍事戦略論を、オイルショックで企業の勢いが低下した時代に日本企業の生き残り策として提唱された、営業・販売戦略です。
同じ武器なら勝敗は兵力数で決まるという前提で、数の多い強者と、数が少ない弱者に分類します。
そして、弱者なら第1法則である弱者の戦略を、強者なら第2法則である強者の戦略を採ることでシェア拡大やライバルに打ち勝つことができるというものです。
弱者の戦略では市場細分化による差別化戦略で勝負し、強者の戦略では差別化を図ったライバルの真似をすることで、差別化要素を薄め、シェアを奪い返すことや維持していくことが可能となります。

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