シェアードサービスとは?事例やメリット·デメリット、導入のポイントを解説

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シェアードサービスはアウトソーシングの一つであり、業務コストの削減とクオリティの担保を両立させる手段として導入が進んでいます。
同じくBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)が経営手法として挙げられますが、両者には違いがありそれぞれにメリット·デメリットが存在するのです。
企業が導入を考えたとき、どのようなポイントに気を付けるべきか、事例を踏まえて解説します。

シェアードサービスとは?どんなことを意味するのか

シェアードサービスは多くの場合、業務効率化のため間接部門のサービスを共有することを指します。
たとえば、人事部や総務部、法務部などのバックオフィス業務を1ヶ所に集約し、経営をスリム化してコスト削減につなげることを目的としているのです。
世界で最初に導入したのはアメリカのGE社だとされており、1980年代に組織内に分散した共通業務を集約化したことが起源とされます。
当初は伝票処理など経理業務を一つにまとめただけでしたが、各部門に共通する業務を簡素化できるということで実施されたのが始まりです。
この手法はアメリカの大企業のスタンダードとなり、日本へは1997年以降に積極的に導入されるようになりました。
ちょうどその頃はバブル崩壊直後で業務の効率化が急務だったため、コスト削減のため導入する日本企業が増えたという背景があります。

BPOとの違い

業務効率化の意味でシェアードサービスと同時に挙げられるのがBPO(Business Process Outsourcing)です。
BPOは企業の一部門を丸々アウトソーサーに移管する、もしくは売却する形で、サービスのみ継続する手法を指します。
該当する部門はやはりバックオフィス部門であることが多いのですが、現在はアウトソーサーにもかなり幅が出てきました。
そのため、物流や開発部門、経営に関係するマーケティング部門なども含め、かなり広範囲の業務がアウトソーシングされる時代になっています。
目的はシェアードサービスもBPOも大きな違いはありませんが、委託先がグループ会社など「身内」である場合シェアードサービス、まったくの外部業者である場合はBPOと呼ばれるのが一般的です。

シェアードサービスのメリットとデメリット

シェアードサービスにはメリットもあればデメリットもあります。
それぞれをまとめてみましょう。

メリット

ではまずメリットから見ていきましょう。

コスト削減

導入するメインの目的であり、抱えておかなければならない人員の総数の削減が図れることが大きなメリットです。

クオリティの担保

専門スキルを持つ人材を1ヶ所に集めることで、個人のスキルや部門ごとのスキル差をなくし、標準化された一定のクオリティが担保される環境を作れます。

コーポレートガバナンスの向上

各部門やグループ各社でバラバラになっていたバックオフィス業務を一括管理することで、コーポレートガバナンスを保つ環境が確保されます。
対外的にも社会的信用を得やすい条件となるでしょう。

デメリット

では、デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

専門家が部署内に不在となる

専門知識を持つ人材を外に集約するということは、ほかの業務に携わる部署にはその専門知識を持つ人員がいなくなることを意味します。
たとえば、日常の業務の中で確認したいことがあったり、問題が起こったりしたときにも、いちいち社外へ問い合わせなければならなくなり、問題が先送りされてしまう懸念があります。

システムの統合にコストがかかる

別の組織体にするということは、組織間、会社間でシステムやフローの統合が必須となります。
調整にはコストがかかり、場合によっては大掛かりな開発費が発生するケースも考えられます。

シェアードサービスを導入すべき業種や業界について

アビームコンサルティング株式会社が、東証一部上場企業を中心にシェアードサービスを導入している企業向けに行ったアンケートによると、以下のような業種が導入を実施していました。
製造業58%
卸 小売業14%
運輸業9%
電気ガス水道業5%
サービス業5%
建設業3%
金融保険業3%
アビームコンサルティング株式会社 日本型シェアードサービスの成功要因
調査は2005年のものですが、これを見ても圧倒的に多いのが製造業であることが理解できます。
事実、世界的に見ても消費財メーカーや飲料メーカーなど製造に関わる多くの企業がシェアードサービスを展開し、短い間に大きな成果を上げています。
特に人事や財務をシェアードサービス化し、処理頻度の高い手作業をRPA化することで業務の自動化を推進した企業が成功を収めていると言えるでしょう。

シェアードサービスの実例

それでは日本でもよく知られている企業において、シェアードサービスを成功させている実例を紹介しましょう。

P&G

有名な世界最大の消費財メーカーであるP&Gは、1999年に経理財務部門を中心とする80ヶ国以上のバックオフィス業務をシェアードサービスに集約しました。
このグローバルビジネスサービスの実施により10億円のコスト削減と、2004年には売上原価昨対比3割超減に成功しています。

大和ハウス工業株式会社

大和ハウス工業は2012年からシェアードサービスを導入し、82ヶ所の事業所が個別に行っていた経理財務業務を本社に集約しました。
事業所が実施するのは経理データの準備のみとなり、取引先への通知業務をシステム化することで業務品質の向上と働き方改革を実現しています。

LIXIL

LIXILグループは105の子会社に分散していた間接部門を統一するため、シェアードサービスで会計システムを統合しました。
販売や人事など基幹システムとは切り離すことでほかの業務に影響を与えることなく、経理部門の人材ローテーションを可能にしています。

シェアードサービスを導入する際のポイント

シェアードサービスを成功させるには、導入する部門を適切に選び、手法を検討する必要があります。
統合した後どこに管理機能を置くかによっても運営は変わるため、部門の配置も重要と言えるでしょう。
シェアードサービス導入にあたってのポイントをまとめます。

部門選定

共有できるサービスは多くの場合似通ってきますが、独自に体制を構築することももちろん可能です。
ポイントはどの部門で業務プロセスが平準化できるか、集約できるかですので、その見極めが何より重要だと言えます。
一般的には「財務経理部門」「人事総務部門」「情報システム部門」「物流部門」が候補に挙がりやすいです。
これらはすでに導入実績が多く存在するため、パッケージ販売されているケースが多いのもポイントです。

システム見直し

各部署がそれまでバラバラに管理処理を行っていたわけですから、システムが複数存在することが大半です。
まずはそこから見直し、開発者やベンダーと調整することが重要です。
また、統合後のほうが業務が煩雑になってしまっては本末転倒ですので、システムは簡易化することが大前提となります。
既存システムと並行稼働する際には本業に悪影響を及ぼすことのないよう、慎重に実施することもポイントです。

配置の決定

管理部門をどこに配置するかを決定しなければなりません。
本社に配置したほうが混乱が少なく済むメリットがある反面、人件費が高くなる傾向があります。
子会社に配置すると人件費の面ではメリットがありますが、統合後現場が混乱する場合や本社から人員を派遣せざるを得ない状況となり社員が離れていく懸念もあるのです。
モチベーションの低下や離職など悪影響を及ぼすことのないよう、決定には慎重になる必要があります。

まとめ

シェアードサービスの導入は、単にコスト削減や業務効率化を狙って実施するだけでなく、企業全体の品質改善が望めることが大前提です。
業務を平準化することでクオリティを落としてしまったり、かえって業務が非効率になったりしては意味がありません。
シェアード化では人事異動や雇用形態の変動も発生する可能性が高いですが、社員や子会社のモチベーションを低下させないよう、全社納得のもとに進めることも大切です。
それらの要素を意識したうえで慎重に実施すれば、その後の運用面で大きなメリットを享受できる業務改革となるでしょう。

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